写真を通して伝えること③
続きです。
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私はあまりに突然のことで信じられないまま、葬儀へ参列したことを覚えています。
そのあとしばらくして、街を訪ねました。
いつも見ていた風景も何だか静けさに包まれていて
胸が締め付けられる想いを感じながら旅館を訪ね、旦那様と話すことになったのです。
旦那様の顔からは覇気が感じられませんでした。
女将の体調に気が付いてあげられなかった後悔を語り、
今はまだ何をする気にもなれないと旅館の営業再開は未定という状況でした。
最愛のパートナーであり相棒をなくしたのですから、無理もありません。
ただ、このままでは旅館の存続どころか、旦那様の心までもが壊れてしまうのではないか…そう思った私は、彼にこんな提案をしました。
「以前旅館に来てくれたお客様に呼びかけて、旅館での想いでの写真を集めませんか?
そしてそれをフォトブックにして女将にもみてもらいましょう。」
旦那様の喪失感が大きいのは、それだけ女将さんから幸せをもらっていたからです。
そして、それは私にとっても同じでした。
いつも明るくて、前向きで、思いやりが深くて…。
私も、女将さんからたくさんの幸せをいただいていました。
そして、それは私以外の人たちも、たくさんの人たちもそうだったと確信していました。
女将さんに元気をもらった人たちが、たくさんいて…。
それを旦那様にも思い出してほしい。
女将さんが残したものを、女将さんの意志を
少しでも感じてもらいたいと願っての提案でした。
当初その提案は全く受け入れられませんでしたが
時間をかけてじっくり話し合った結果、フォトブックを作る企画はスタートしました。
後に旦那様にお話を伺うと、女将の「現状維持は退化と同じ」という口ぐせを思い出し、決意してくれたのだそうです。
また、この旅館には写真にまつわる都市伝説がありました。
女将と写真を撮ると、夢が叶ったり、好きな人と両想いになれた
仕事で良い結果を残せた等お客様にラッキーが訪れるというのです。
そのため世界中から1000枚以上の写真が集まり、そこには写真だけでなく、応援のメッセージや女将との思いで、旅館やその土地へのエール、予約の相談が寄せられたのです。
女将さんが幸せにした人達がたくさんいることを感じた旦那様は
思い出したんだと思います。
女将さんがどんな人だったのか?
そして、天国にいる女将さんが何を願っているのか?を
このことが旦那様の沈んだ心に灯をともし
女将の死から6ヶ月後満を持して旅館は営業再開を果たしたのです。
写真は一瞬をエターナル(永遠)にします。
写真を見ると、楽しかったあの頃に瞬間移動することができます。
まだ行ったことがない素敵な場所、そこで過ごす楽しい時間を知ることができます。
女将さんの写真を送ってくださった方々は、
その写真を見て、もう一度女将さんとあの頃の自分に再会しました。
そして、再び、旅館を予約してくれました。
そこで、フォトブックや旅館の壁一面に飾られた、女将さんと映る沢山の笑顔の写真を見て、沢山の幸せがあったことを知りました。
その沢山の笑顔の写真は、旅館のウェブサイトや、
お客さんたちのSNSにも載せられました。
そうして、その場所でしかつくられない幸せを求めて
また沢山のお客様が旅館にいらっしゃっています。
「これまでの幸せ」は、「これからの幸せ」に繋がっていくんです。
新しい時代の観光は、派手さはないけど、
いつまでも旅行者の心に残るそんな地方の小さな観光地に注目が
集まるようになるのではないでしょうか。
もしよければ、写真で地域の魅力を伝えてみませんか?
まずは、ざっくばらんにお話しをきかせてください。
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